Hina

女は笑いながら言った。

「すごいですねえ」

やった。

やる気満々じゃん。

俺は女の手を引いて、まだ夜も早い時間にホテルにしけこんだ。



女はホテルの部屋でマイクを握っていた。

いや、変な意味じゃなく本当のマイクを。

なのにほとんどきちんと最後まで歌える歌がない。

俺は女の中途半端な歌を訊きながら、何か消化の悪いものでも食べたかのような気分だった。


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