Garnet~大好きの伝え方
彼が一直線であればあるほど……私は後ろめたくなる。

こんな私よりもずっと、北川くんにはふさわしい子がいる。きっといる。

なのに、どうして私なんかを好きになったんだろう。

絶対に叶いっこない恋をどうして、彼は諦めないんだろう。

諦めが悪いのは、私だって同じだけど。

仕方なく、私は言った。

「……て」

「え?」

「手を握るのは、いいよ。デート、なんだから」

北川くんは一瞬、私のほうがハッとするほど切ない表情をしたけれど、すぐに笑顔になった。

ことさら大げさに喜んで、私の手を握ってくる。

どうして彼が私なんかに恋したのかはわからない。

けれど今の瞬間、私は北川くんにとても同情した。

つらい恋をしてるねって、ひとごとみたいに。
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