Garnet~大好きの伝え方
彼の口からきちんとその言葉を聞くことができたら、

きっと私は、嬉しさで発狂してしまうと思ってた。

祭り囃子が響くように意識が高いところまで飛んでいってしまう。

わたあめのように、柔らかくて極上の甘さだけを残してさっと溶け去ってしまう。

吊り下げられたマリオネットや空高く舞い上がるたこ、埃を被った古いヴァイオリンの弦のように、なにかがツィンと弾け切れてしまう。

そんな気がしてた。

だけど実際は、全然違う。

爽やかでふわりとあたたかい、まるで春の風に吹かれたような気分だった。

頬を撫でていかれる煤しさや、髪がなびく心地よさ。

その春風は私の全身を真正面から包み込んで、くるりと背後で方向転換、

そのまま私の周りを渦巻いて、一気に、私を空へ舞い上がらせてくれそうだった。
< 301 / 370 >

この作品をシェア

pagetop