トールサイズ女子の恋【改稿】
 side水瀬幸雄

 高坂専務と2人で飲んでから1週間が過ぎても、相変わらず仕事の忙しさで美空とのデートは出来ていない。

 進行の滞りがなければ日曜日には行けるかなと、頭の中でスケジュールを確認する。

 社内で会っても挨拶程度の関係は変わらないけれど、美空は寂しく思ってないかと考えて【もりや】のランチに行くことにした。

 最初は【もりや】へ行くときに他の人に関係がばれるかなと思って手を繋がなかったけど、美空も同じことを考えていたのかどこか寂しげでいて、帰りはやっぱり繋ぎたくなって通りが見えるまで繋ぐことにすると、美空は花が咲いたように嬉しそうに微笑む。

 寂しい顔じゃなくて今みたいな顔をさせるようにしたいなって思い、俺は元気をつけたくて美空と細道に入って自販機に隠れるようにして、美空の耳朶を甘噛みした。

「そんなに寂しい顔をしないで?」
「んっ!」

 俺は美空よりも5センチ低い身長差があるから恋人に背伸びをしながら甘噛みをしたのは初めての経験で、美空の顔がみるみる内に真っ赤になるのを見て"してやったり"と思い、先に四つ葉出版社に戻って仕事を始めるとタウン情報部の姫川が俺のところに来た。

「明日の交流会、荒木は欠席だってよ」
「そうなんだ。人脈広げるチャンスなのに、仁っていつも行かないよね」

 俺の同期の荒木仁はスポーツ部の雑誌の編集長をしているけれど、あまり表立った交流は好きじゃないのか四つ葉の飲み会も業界の交流会にも顔を出すのがあまりないけど、それでも仁のスポーツ部の雑誌を作るための人脈はとても優れていて、毎回普段会っていない時間にどうやっているんだろうかと考えた。
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