トールサイズ女子の恋
 国立公園近くから百貨店が立ち並ぶ大通りに戻り、今度はその百貨店の裏通りに入る。

 こんな場所にBarがあるのかなと不安がよぎる中で、水瀬編集長は迷いもなく歩き続けると1軒のBarの前に足が止まった。

「ここ、高坂さんと俺たち編集長メンバーでよく飲むBarなんだ」
「ここが……」

 私はお店の看板を見ると【Bar Jewelries】と書かれていて、窓はなくドアもシンプルな鉄の扉で、水瀬編集長は扉を開けて私を先に通させた。

「いらっしゃいませ」
「今晩わ…」

 カウンターの中にいる一人の男性がシェイカーを振っているを手を休めて、私に挨拶をした。

 男性は顔は彫りの深く、髪を後ろ一つに束ねて顎髭があり、大人の男性そのものって感じでBarに馴染んでいる。

「三斗さん、今晩わ」
「水瀬さん、いらっしゃい。こんな素敵な女性と一緒だなんて、羨ましいですね」
「そっ、そそそそ、そんな?!素敵だなんて勿体無いですよ、ただ図体がデカイ女です…」
「そんなに自分を下げなくてもいいんですよ、カウンター席にどうぞ」

 三斗さんという男性は特に私の身長のことを気にしてはいないみたいで、私たちはL字カウンターの左奥側に座ると三斗さんにカクテルを作ってもらい、差し出されたグラスにはピンク色のカクテルが入っていて、水瀬編集長のはオレンジをベースにしたカクテルで、2人でそっとグラスを合わせて乾杯をした。

「美味しい…」
「三斗さんが作ってくれるのはどれも美味しくて、とても好きなんだ」

 グラスに口をつける水瀬編集長の姿は格好よく、さっき転びそうになった時に助けてもらってから水瀬編集長に対してずっと胸がドキドキしてるのは、アルコールのせいなのかそうじゃないのかまだ分からないや。
< 47 / 162 >

この作品をシェア

pagetop