トールサイズ女子の恋【改稿】
「ここに入るよ」
「ここですか…」

 私は看板を見上げると【Bar Jewelries】とあり、どおりで何処か見たことのある通りだと思った。

 もしかして水瀬編集長もここにいるのかな?よくここで高坂専務たちと飲むと言っていたし…、変にどきどきしながら中に入るとシェイカーを振る三斗さんがいて、お店の中を見渡すと水瀬編集長の姿がなくてホッとしたのと同時に、ちょっと寂しく思っている自分がいる。

「いらっしゃいませ。あぁ、美空ちゃんじゃないか。久しぶりだね」
「今晩わ…、お久しぶりです」
「あれ?三斗さんは星野さんのことを知っているの?」
「実は前に水瀬編集長に連れてきてもらいまして、飲んだことがあるんです」
「なぁ~んだ。ここ、俺のお気に入りだから連れてきたいなぁと気合いをいれたんだけど。まっ、座ろっか」

 私たちは扉近くのカウンター席に座ってカクテルを作ってもらい、それぞれの前におつまみとカクテルが置かれ、それをお供に高坂専務に仕事のことを話す。

「この前仕事でミスをしてしまって…、慣れって危ないですよね」
「俺も最初の頃なんて、失敗続きでよく怒られたもんだよ。専務になっても上からネチネチ言われるし、姫川にはよく怒られるし」
「姫川編集長はいつも怒ってるイメージがあって、怖いです」
「笑っていれば、俺みたいにモテるのにねー」

 高坂専務があまり元彼については触れないように話をしてくれるから、その気配りが嬉しくて、高坂専務に好感を持つ人が沢山いる理由が分かるような気がした。
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