トールサイズ女子の恋【改稿】
「うわ…」

 中に入って思わずそんな声が出てしまったのは、机に突っ伏している人たちや床に直接横になって寝ている人もいるからで、雑誌の編集部ってこういう雰囲気なのかなと、ちょっとたじろいてしまう。

「あー、この間まで季刊を作っていたから疲れが出てたかも」
「そんなに大変だったんですか?」
「僕ら総務課とかは定時に帰れるけど、編集部のみんなは締め切り間近はほぼ徹夜だったって言っていたし、季刊の他にもそれぞれの部署で発行している雑誌も進行しなくちゃいけないからね」
「それでこんな状態なんですね」

 私はこの有り様に納得すると、木村さんも目の前の惨状に苦笑する。

「部署を説明すると、この入り口から物凄く奥にある部署がタウン情報部で、僕らの目の前にあるのがスポーツ部。そして、このフロアの大部分を使用しているのがファッション部だよ」
「あそこが『Clover』を作っている部署なんですね」
「そっ。さっきも説明したけど郵便物に宛名が書いてあるし、配るときは間違いは無いと思う。後は、配りながら社員の顔と名前を覚えるのが一番かな」
「分かりました」
「それぞれの雑誌の編集長もいればいいけど……、見渡す限りいなさそうだね。とりあえず次は3階かな」

 一通り2階の説明が終わると、今度は3階へ移動した。

 このフロアは社長や役員の方々が利用し、その他は会議室が複数あって鍵の管理は総務課の課長がしているとのこと。

 「私たちは鍵の貸し出しはしない…と」

 メモは木村さんから教えてもらった内容でびっしりと埋まり、覚えることがいっぱいだけど、せっかく転職出来たので根をあげるわけにもいかない。
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