トールサイズ女子の恋
「じゃあ、そろそろ総務課に戻ろう」
「はい、教えていただいてありがとうございます」
「そんなに堅苦しくしなくてもいいよ」
「勤務初日ですし、緊張しています」
「僕も最初は緊張したけど、ここの社員はみんないい人ばかりだから大丈夫だよ」

 木村さんは雰囲気を和らげるように色々と話をしてくれるから、勤務初日の緊張がなくなってくる。

 すると会議室のドアが開き、スーツを着た男性が出てきて、廊下を歩いている私たちに気が付いて此方に歩いてくるけど、確か―…私を面接をした人だったよね。

「お〜木村、お疲れ。なんだ、仕事サボってデート?」
「高坂専務、お疲れ様です。サボりでもデートでもなく、今日から総務課に配属された星野さんを案内してました。星野さん、こちら専務の高坂専務」
「星野美空です。本日から総務課になりました」
「そっか~、あの時面接した子か。総務って色々と仕事があるけど、おかげで俺たちも仕事がスムーズにやれるから頑張ってね」
「はい、頑張ります」

 高坂専務は手をヒラヒラと振り、専務室へ入っていった。

「だから、もう少し部数を増やせって言ってんだろ!」
「これ以上は無理ですって!」

 高坂専務は閉め忘れてちゃったんだろうか、さっき高坂専務が出てきた会議室のドアが開いていて誰かの怒鳴り声が聞こえてきたので、私はドアを閉めようと、そっとドアノブに手をかける。

「まーまー、姫川。そんな風に営業の人を困らせちゃ駄目だよ」
「相変わらず、お前は甘い奴だな」
「嫌われるよりかマシだよ。営業のみなさんのお陰でこうして雑誌を書店に置かせてもらってるし、僕もファッション部としてももっと読者を増やしたいので、どうか部数を検討してください」
「水瀬さんがそう仰るならー…」
「俺が先に部数増やせって言ったが」
「だから、そういう態度が駄目なんだって」

 なんだか騒々しい会話が中から聞こえちゃって、私はそっとドアを閉めて総務課に戻った。
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