トールサイズ女子の恋【改稿】
 私は椅子に座って熱くなった頬を手で扇ぎ、水瀬編集長は私の腕を掴んでいた手を離して気恥ずかしいように頭を掻いている。

「在庫室で水瀬編集長に抱き締められた時、まだYUKIを彼女だと思っていたので、彼女いるのに!って突き飛ばしちゃってごめんなさい。痛かったですよね?」
「粋なりだったからね、でも怪我はないから大丈夫。じゃあ、俺も聞いてもいい?」
「何でしょうか?」
「ここに来る前、どうしてBarで泣いていたのか教えて?」

 私がBarで涙を流した理由…、接待で元彼と再会したことは口が裂けても話したくないので、高坂専務たちに話を聞いてもらったところからがいいよね。

「最初は水瀬編集長に彼女がいるって思っていたので、彼女がいるのに手を握ってきたり食事をしに行くのってどうしてだろうと思って。私をからかっているんじゃないかって話をしてたら、仁さんという人に水瀬編集長のことを嫌いなのかって聞かれたんです」
「仁に会ったの?」
「はい、会いました」
「そっか…。それで星野さんは、俺のことは嫌いって答えたの?」
「仁さんに水瀬編集長のこと……、どう思っているのか…、そう聞かれて…」

 本人を目の前にすると上手く言葉を続けることが出来なくて、途切れ途切れになる。

 彼女がいると誤解して、接待の時に気付いた気持ちは叶わないと思っていたから、それを伝えるとなると緊張しちゃう。

「ゆっくりでいいよ」

 水瀬編集長はうまく話せない私に優しく微笑むから、今なら言えそうな気がする。
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