トールサイズ女子の恋【改稿】
「ランチに行った日は水瀬編集長はどういった服が好みかなって思って、洋服を褒めてくれた時は嬉しかったです」
「うん」
「九条さんのオデコを触った時は、胸が痛かったです」
「ご免…」

 数週間前のことだけど、あの時の自分がどう思っていたのか走馬灯のように蘇る。

「私がこんな身長で恋愛していても相手に『身長が低い女の子が好きなんだ』って言われて振られていましたから、自分の身長が大嫌いなんです。こんな身長の高い私が隣に並んだら、水瀬編集長はどう思うのかなって。やっぱり低い女の子が好みなのかと思うと恐くて…、胸が張り裂けそうになってました」
「そうだったんだ…」
「でもBarで水瀬編集長が私に『背が高くても気にしない』と言ってくれた時は、とても嬉しかったです」

 水瀬編集長の大きくて温かい手が私の手に重ねられたときの温もりは今でも鮮明に覚えていて、もうその時、私の心は水瀬編集長に傾いていたのかもしれない。

「Barで水瀬編集長とYUKIが恋人同士って思ってからは、仕事をしていてもどんな時でも水瀬編集長のことが浮かんでいて、いつの間にか…、いつの間にか私の心の中が水瀬編集長でいっぱいになっていました。本当に嫌いだったら、こんなにもいっぱいになりません。水瀬編集長のことをす…、"好き"なんだって。そう自分の気持ちに気づいて、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまって泣いたんです」
「そうだったんだ。じゃあ星野さんに1つ、確認したくて聞きたいんだけどさ」
「は、はい…」

 水瀬編集長は私の言葉を聞いて小さく笑みを浮かべ、そして真剣な眼差しで私を見るから緊張してくる。

「俺の隣に並ぶの、嫌?」

 水瀬編集長の隣……、私は頭の中で水瀬編集長の隣に並ぶ自分を想像してみると、私と水瀬編集長は身長差が5センチもあるから周りから見たらアンバランスかもしれないけど、私は……。

「私は水瀬編集長が好きだから…、隣に並びたいで…す」
「うん」
「背が高くても、恋、したいです……」

 身長差があっても水瀬編集長の隣に並びたい、背が高くても恋をしたいと思ったのは水瀬編集長だからで、自分の気持ちを伝えると涙が頬を伝って膝の上に置いている手にぽたぽたと落ちる。

 私は自分の気持ちを伝えたけれど、次は水瀬編集長の気持ちを知りたいよ。

「水瀬編集長は、私のことをどう思っているんですか?」
「俺は―…」
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