トールサイズ女子の恋
 ある時期に高坂専務の提案で四つ葉出版社が季刊を作ることになって、無事に完成して書店に並び始めた。

 滑り出しは好調でスケジュール的にはキツいけど、ここで読者を増やしたくて『Clover』の制作に力を入れ、ファッションを楽しんで貰いたいから頑張れる。

 その後、高坂専務から新しく入った社員の歓迎会をやるとのことで姫川と九条と一緒に遅れて参加をする事になったけど、こんな時期に入社をしてくるなんて珍しいから転職者だろうか?しかも高坂専務は俺には必ず参加をしろと言うし、一体なんなんだろう。

「俺たちは終わったが、お前は行けそうか?」
「ああ。俺もキリが良いから、行こうか」
「久しぶりに飲めますね~」
「お前って、いつも色気より食い気だな」
「食い気で悪いですか?姫川編集長だって、取材で食事をする時はがっつり食べてますよ?」
「ほらほら、今から行くんだから喧嘩しないの」

 姫川と九条のこのやり取りに、かなり慣れてきた。

 俺たちが会場の中に入ると歓迎会に参加をしている社員は殆どで、ファッション部の部下たちも久しぶりの飲み会に嬉しそうにしているな。

 九条は他部署の所へ行き、俺と姫川は高坂専務の席に行くと、いつものように高坂専務と姫川の絡みを宥めながら飲み、ここに仁がいたら良かったけど、仁は大勢に囲まれるのは嫌みたいだから歓迎会は欠席とメールがあった。

 俺はお酒を飲みながら部屋の中を見渡してたらある女性と視線がパチッと合い、四つ葉では見たことがない顔だし、きっとこの人が転職者で歓迎会の主役なんだろうか。

「水瀬、ちょっと…」
「どうしました?」
「あそこにいる子が新しく入った子だ。背が高くてお前のタイプを採用したから、後は頑張れよ」

 俺は高坂専務に耳を寄せると、高坂専務は小声で話して俺の背中をポンッと押すんだけど、Barで理想のタイプを聞かれた時は酔ってたからと思っていたのに、ちゃんと覚えてたんだな。

「そっか、ありがとう」

 確かに理想の女性は『俺よりも背が高い人』って言ったけれど先ずはどんな人かを知る必要があるし、その人の隣の席が空席だから座って話をしてみよう。

「君が新しく入った子?」
「はい、星野美空と言います」

 此れが…、俺と星野さんとの出会いだった。

 星野さんは普段から『Clover』を読んでいるとのこで、話を聞いていると雑誌の内容をよく読んでいるのが分かり、それに言葉づかいが綺麗で、表情は柔らかいというか優しさが含んでいて、嬉しそうに『Clover』の話をしているときの表情が一番素敵で胸が高鳴り、もう少し星野さんと話をしてみないなって思って、星野さんを駅まで送り届けようと決めた。

 俺の方が星野さんを見上げる形で話をするんだけれど、ふといつか仁が俺に言った『水瀬の理想の人が現れるといいな』という言葉を思い出す。

 星野さんは俺より背の高くて頭1分くらいの差があり、まさに目の前に理想の女性像がいると自覚すると胸の高鳴りが加速するけど、俺たちの身長差って星野さんにはどんな風に見えるんだろうか。

 星野さんも『身長の高い人が好きなの』って思うのだろうか、そう思うと自分の身長コンプレックスに拍車がかかりそうで、もっと話そうと思っていたのに出来なくて駅で見送るだけにした。
< 88 / 158 >

この作品をシェア

pagetop