キスマーク



「寒い……」


雨に濡れた身体にクーラーが効いた部屋はツライ。



「シオリさん、震えてる」


「だって寒いもの」


「ごめんね、シオリさん……」



“ごめん”と、何度、ヒロの口からその言葉を聞いただろう。そして今夜は何度聞くことになるのだろう―…



本当はね、私なんて今夜はヒロとの約束をドタキャンしようとしていたのに。


元カレと会って、キスまでして、醜い感情を抱いて―…それを実行しようとしていた。


最悪な女なのよ?


そんなに何度も謝罪の言葉を口にされる価値なんて微塵も無い女、だ。



でも、



「ごめんね……」



と、何度も言って、必死に私の機嫌をとろうとするヒロの姿を見て、可愛いと感じてしまって私は、


雨に濡れた姿でヒロを待ち続けた女を演じてしまう。



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