キスマーク



それと同時に思うのは―…


と、そこまで考えると、



「おっと。そろそろ戻らないとヤバイね」



腕時計を見ながら麻里が言う。



「この後、副社長が外出予定だから車の手配しきゃ~」


「同行だっけ?」


「うん。夜は会食にも顔出さないといけないんだよねぇ。あー、先方の重役が若きやり手のイケメン何とか~だったら良いのに~」


「ないない。絶対、五十歳は超えてるから」


「それが現実だね……」



力無く言って、がくっと肩をおとす麻里。


この歳になると、良い意味でも悪い意味でも現実が見えて夢見ることが少なくなってしまう。


恋愛面では特にそう。




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