キスマーク



「麻里、ここの後片付けやっておくから先に戻ってなよ」


「いいの?助かるー!」


「コーヒー淹れてもらったしね」


「では、お言葉に甘えて……」



麻里が飲み干したティーカップを受け取る。



「じゃあ、先に戻ってるね」



と、給湯室を後にする麻里。



一人になった給湯室では蛇口から流れ出る水音が響く。



ぼんやりと洗い物を続ければ、水音があの日の雨音と重なる。


ホテルを飛び出て、彼の下へ走ったあの雨の夜のこと―…



ヒロ……


私がお見合いをするなんて聞いたら、どう思うのだろう。


しかも相手は医者、だ。



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