キスマーク



「身近に医者を目指している方でも?」


「あ……いえ、何となく……やっぱり大変なのかな、と」



こんな席で、聞いても聞かなくても大変だとわかりきっていることを聞いてしまう自分。


やめよう。ヒロの事を考えるのは。


そう思っても、目の前に居る久瀬さんの職業がどうしても彼の事を連想させてしまう。


しかも、下の名前は“ヒロム”。


最初の二文字がどうしても頭に浮かんでくる。



せっかく、新しい出会いを求めて此処に来たのに、職業、名前、笑い方―…ヒロを思い出させるものが多くて困る。



「箸が止まりましたね」


「すみません……地酒が効いてます」


「いいんですよ。無理しないでください」



手をつけていない料理がまだ沢山。


どれも普段は味わえない美味しい料理ばかりなのに、なかなか箸が進んでくれない。







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