キスマーク
この二つ先の信号を右折すれば、ヒロのマンションだ。
二十四時間の中で、何度も浮かび上がってくるヒロの存在。
シャボン玉みたい、なんて思ってたけど、まるで何時も彼が残すキスマークみたい。
消えたと思っても、また新たに印される。
呪縛のような印。
そして彼の存在も私の心を縛るものへと急速に変化している気がしてならない。
年下の男の存在なんかに縛られている場合じゃない。
どうせ縛られるならもっと大人の落ち着いた男がいい。
そう、今夜一緒に食事をした久瀬さんのような―…大人の男性。
そんな事を思った瞬間、携帯電話が鳴って、
「―…っ」
液晶に表示された着信相手の名前を見て、ビクン、と身体と心が反応する。このまま無視をすればいいのに、電話をとらなければいいのに、
「はい―…」
と、出てしまう自分。