キスマーク
「待って」
と、誰かが、改札に入ろうとする私の肩を掴んだ。
誰?
久瀬さん?でも、違う。この手の感じは―…
ざわめきだす心を感じながら振り向けば、
「待ってよ、シオリさん」
と、息を切らすヒロの姿が瞳に映った。
「どうして……」
どうしてまた、こんな所で会ってしまうの?
「ちょうどバイト帰りで―…偶然、シオリさんを見つけた」
「見つけたって……」
「久しぶりだね」
そう言って私を見つめる瞳には何時もの甘い眼差しはなく、どこか鋭く、けれども、哀しげだ。