キスマーク



ヒロを見たまま、足が止まる私に、


どんっ、


と、スーツを着た中年のサラリーマンがぶつかってきた。



「っと、すみません」



謝るサラリーマンに、



「いえ、こちらこそすみません……」



と、私も頭を下げる。こんな改札の目の前で立ち止まったままじゃ迷惑だ。とりあえず、もっと人の少ない場所に動かないと。でも―…


動いてどうするの?ヒロに何か用事があるの?


なによりも、もうヒロとは―…



そう思った瞬間、



「こっち」



と、ヒロの手が私の右手を握る。





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