キスマーク
「もう忘れたわ」
あんな夜の出来事なんて、と言う様にヒロから視線を逸らす。
「でも、身体は覚えてるでしょ?」
「バカじゃないの……」
「じゃあ、今からデートしようか」
「するわけないでしょ」
ヒロから唐突なデートの誘い。デートというよりも、また何時もの時間を過ごしたいだけのくせに。“身体が覚えている”か確かめる行為をしたいだけ。
「シオリさんとゆっくり話がしたい」
なんて口では言ってくるヒロに、
「ゆっくり話すような話題もないでしょ」
と、冷たく答える。