キスマーク
聞き覚えのある声に、ピタリと足が止まる。
振り返ると、そこに立っていたのはスーツを着た“彼”。やっぱり、と思う。
「久しぶりだな」
そう言って、彼は一歩私に近付く。彼の名前は五十嵐一哉(イガラシカズヤ)。一つ前に付き合っていた“元カレ”。
約七ヶ月ぶりの再会だ―…
「偶然―…と思ったけど、そうだよな。詩織の会社、直ぐそこだもんな。今からお昼?」
「……そうだけど」
「俺はちょうど、この近くに取引先があって―…」
そこまで言うと、「あ、」と、私の隣りにいた麻里を見て、
「えっと―…麻里さん、だよね?久しぶり」
と、声をかける一哉。
「どうも……」
そう言って麻里が軽く会釈をする。私を通じて一応、顔見知りな二人。だいぶ前にだけど一哉の友達も交えて食事をしたこともある。