キスマーク
破局の原因を知っているせいか、麻里の表情は気まずそう。久しぶりに一哉とバッタリ会ったからといって立ち話するような話題も無い。貴重な昼休憩。“元カレ”よりも断然“ランチ”が大事だ。
「あの、私達急ぐから」
無愛想に告げる私。
「あ、ああ―…悪かったね。いきなり引き止めて」
そう一哉が言うと、「行こう、麻里」と、私は直ぐに背を向けて歩き出す。
数歩歩くと、
「ねぇ詩織、今のって―…」
と、麻里が小声で言ってくる。
「そうだよ。前に付き合っていた、一哉」
「もしかして別れて以来、とか?」
「そりゃそうでしょ」
「……何か、気まずい再会ってカンジ?」
「そう?全然そんなのないけど。向こうも普通に声掛けてきたし」
「いやぁ~…私は一哉くんのその神経が理解できないわ……」
ちらっと後ろを気にしながら麻里が言う。
「いいって。もう過ぎた事だし」
「けど~…」
「それより、ランチ。ランチ。あ、窓際の席、空いてるっぽいよ」
アイツの事は本当にもういいから、と、言わんばかりに話題をランチに切り替える私。