キスマーク
くいっと、タンブラーを空にして、
「いいよ。任せる」
私はヒロの瞳も見ずに言う。
さっきまで何度も返した、やる気の無い返事じゃなく、わりとハッキリした言い方で。
そんなわたしの返答がヒロにとっては予想外の一言だったのか、少しの間が開く。
「―…いいの?任されて」
「いいんじゃない?」
「じゃあ、出ようか。ここ」
チェックの合図を店員に出すヒロ。
“奢り?”と聞いたものの、年下の男に奢られるのも何だかな……
そう思って、鞄の中の財布から万札を一枚抜き取ってカウンターに出す。
けど、
「誘ったのは俺だからね、シオリさん」
そんなヒロの言葉と一緒に戻ってきた一万円札。年下の軽いナンパ男でも、そんなトコはちゃんとしてるんだな、なんて少し感心。
結局、奢ってもらって店を出た。