ダイス


すると、本当に新井太一という人間は何処にも存在しなかった。


戸籍がないのは勿論、雪音から聞いた話から生まれた街の小学校や中学校を調べてもその名前はなかった。


彼が偽名を名乗った可能性も確かにある。


でも、存在しない、と言い切った彼の瞳は嘘を吐いているものではなかったのだ。


「新井の戸籍は本当に存在しなかった」


深水の言葉に紗江子は驚いた顔をした。


「だから、ですか?」


紗江子は直ぐにいつもの無表情に近い顔に戻し、そう言ってきた。


「何が?」


「今回の事件も、無差別なものだと思えないのでは?」


紗江子の言葉に目から鱗が落ちたような気になった。


どうしてそう繋げたのか。


流石は元部下というところだろうか。




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