冷たいアナタの愛し方
「レイド……私に気付くかしら。ううん、シルバーが居るんだもの。すぐ気付くはずよね…どうしよう…こんな格好して絶対変に思われちゃう」


ここ1年程は会っていないが、毎年ローレンを訪ねてくれて遊んでもらうのが日課だった。

剣の稽古やお茶会…何でも付き合ってくれて、大好きな人なのだが…


「どうする?残っていてもいいよ」


こそりと声をかけてきたルーサーの気遣いは嬉しかったが、レイドに会いたくない反面会いたいという気持ちもある。

何よりローレンの現状を恐らく知っているであろうレイドから色々聞き出せるのではないかと踏んでいたオリビアは首を振ってちょんとルーサーの腕を突いた。


「大丈夫。でもあの…この格好はちょっと…」


「うーん、どうしようかな…。じゃあ君は僕の知人ということで対処しよう。…ジェラールには相変わらず君がオリビアだっていうこと…言わないの?」


「言わないわ。だってあの人私のことがわからなかったのよ?レイドが私の名前を呼んでしまえばおしまいだけど」


「そっか。じゃあとりあえず着替えを用意しよう。ジェラール、ちょっと先に行っていてもらえないかな」


ひそひそ話をしている2人が気に食わなかったジェラールは前を歩きながら振り返ることなく鼻で笑った。


「また俺を仲間外れにして内緒話か?…ふん、勝手にしろ」


「拗ねるなんて可愛いなあ。すぐ戻って来るから」


ルーサーがからかうと余計に早足になったジェラールがハーマン宰相と共にスロープを上って行き、ルーサーは王妃のドレスルームにオリビアを案内すると、なるべく質素で目立たない淡い水色のドレスをオリビアに見せた。


「これならどうかな。僕の隣に居ると絶対気づかれるから、レティたちと一緒に壁際に居るといいよ。人が多いしその中から君だけを見つけ出すのは難しいだろうし、大丈夫だよ」


「わかったわ。ルーサー…何もかもありがとう」


シルバーを見張り役に残して部屋を出たルーサーは、腕を組んでドアに寄りかかりながらレイドをどうやり込めようかと考える。


「忙しい時を狙うように来たけど…どうせローレンのことだろうな…」


ウェルシュ亡き今、どう説明すればいいのだろうか?
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