冷たいアナタの愛し方
亡き義母のドレスをすんなりと着こなしたオリビアが出て来ると、ルーサーは恭しく手を取ってリードしながら玉座の間を目指す。

すでにレイドは玉座の間でジェラールとやり合っているはずなので、いくつかの注意点をオリビアに言って言って聞かせた。


「絶対に発言しないように。顔も上げないように。皆に言ってなるべく君の前で壁を作るようにしておくから」


「でも…シルバーが…」


「ちょっとの間だけ違う部屋に居てもらおう。レイドが数日間滞在するとは聞いてないから、すぐ帰ると思う」


違う部屋に居てもらうと聞いたシルバーはすぐさまずいっと前進してルーサーの前に立った。

無言で訴えかけてくるシルバーの鼻を撫でてやろうと手を伸ばしたルーサーは、シルバーが噛みつこうとしたので慌てて手を引っ込める。


「シルバー!めっ!ごめんなさいルーサー、こんなことする子じゃないのに…」


「いや、でもわかるよ。君を守ろうとしてシルバーも必死だろうから」


オリビアに怒られてしまって尻尾をだらりと下げてうなだれたシルバーは、レイドのことがあまり好きではない。

いつもオリビアにべたべたしていたし、オリビアの目を盗んで尻尾をよくつねられた。

そう考えるとルーサーやジェラールの方が断然いいわけで…


「シルバー…ちょっとの間だけだから。いいわね?」


「……ぅゎん」


不承不承返事をしたシルバーに1度ぎゅっと抱き着いたオリビアは、玉座の間の隣室にシルバーを入れて手を振ると、深呼吸をした。


「高官たちが壁になるように配置するから。僕の言ったこと、守れるね?」


「ええ、頑張るわ」


にこっと笑いかけてくれたルーサーに笑みを返すと、先にルーサーが中へと入って行く。

扉の向こうに少しだけ見えた部屋の中からは、レイドの澄み渡るような声がした。


「ばれないように頑張らなくちゃ」


そう願ったのだが――
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