冷たいアナタの愛し方
多くの高官たちの中には、ウェルシュが何者かに暗殺されて自由を勝ち得て喜んでいる者が多かった。

特にジェラール派の高官たちは明らかに勝ち誇った笑みを浮かべていて、ウェルシュ派だった者たちを蔑んだ目で見ていた。

ルーサーは参謀として頭の切れる男だと認められていたので、そんなルーサーから頼みごとをされた高官たちは、ルーサーが拾ってきたという女の奴隷がドレスを着て自分たちが壁になるようにと言われたことに疑問を感じつつも断らなかった。


「なるべく隠れるように…背の高い人の後ろに行こうかな…」


玉座の間へ入ると――ジェラールは玉座に座らず、脇に立っていた。

まだ正式に王位を継いでいるわけではないという意志の表れらしく、あそこにふんぞり返って座っていたウェルシュとは対称的だ。

そして距離を置いてジェラールと対面しているのは…強国ハルヴァニアの王、レイド。


10歳年上のレイドは遠くに居てなかなか会えない兄のような存在で、会える時は下準備をして何をして遊ぼううかと計画を立てるのが大好きだった。

相変わらず痩身体躯で、艶やかな黒髪は背中半ばまで達している。

懐かしさに勝手に身体が前進しそうになりつつ、何気なくレイドがこちらに視線を遣ったような気がしたので慌てて顔を伏せた。


「…つまりガレリアがローレンを攻めたのは手違いだったと?」


「永世中立国のローレンが何やら戦略的な企てを行っているらしいと噂を耳にしたウェルシュが先走っただけのこと。ガレリアとしてはローレンを攻める考えなど一切持っていなかった。それとローレンからは駐在していた軍を撤退させた」


「そのようで。我らハルヴァニアとしては、貴国が間違いだったとはいえローレンを攻めたことを憂慮している。手紙だけでは誠意が伝わらずこうして訪問したが…肝心のウェルシュ王子はどこへ?」


「……ウェルシュは先日不慮の事故で死んだ。今は葬儀の準備で忙しい」


「不慮の事故?それはどのような事故で?それとあなたは金の髪だったと覚えているが…その髪の色は一体?」


納得など到底せずに質問攻めを始めたレイドは、玉座を挟んで反対側に立っていたルーサーに回答を求めた。

緊迫した空気が玉座の間を包み込み、知らない一面を見せているレイドの押しの一手にオリビアが固唾を飲んで見つめる。


そんな時――

レイドがオリビアの声を上げさせる言葉を、口にする。
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