冷たいアナタの愛し方
真実を語ろうとせずに互いに目配せをし合っているジェラールとルーサーにやきもきしていたレイドは、オリビアの父であるへスターから大役を任じられていた。


ガレリアがローレンを攻めたとなると、今行方不明になっているオリビアはこの国に居る可能性が高い。

王女だったと知られているのならばなおのこと軟禁されている可能性が高く、養女とはいオリビアを実の娘のように愛していたへスターとアンナが日々気を揉んでオリビアの行方を知りたがっている思いに応えてやりたい。


だが今目の前に居る2人はそんなそぶりも見せずにのらりくらりと質問を交わそうとしている。

ローレンを攻めた理由はなんとなくわかったが――オリビアの件は全くといっていいほどの別件で重要案件だ。


ここはもうストレートに聞くしかないと考えたレイドは、1歩前に進んで詰め寄る姿勢を見せて、力強く言い放った。



「へスター国王陛下は現在破壊された街の再建と行方不明の王女の行方を捜しておられる。もしこちらに滞在しておられるのであれば、私が連れ帰りたい。条件を提示して頂ければ……」


「え……!?生きて…いるの…!?」



――レイドの声以外しんと静まり返っていた玉座の間に、オリビアの甲高い絶叫に似た悲鳴が響き渡った。

聞いたことのある声…


養女だったあの王女が小さかった頃から幾度となくローレンを訪問して遊んでやって、気が合って…

どこの馬の骨かもわからないが是非妻にと望んで秘密裏に婚約をしたその女性の声がした。


「な…に……?」


声のした方の人垣が割れる。

隠れるようにして立っていたのは、両手で口元を覆ったオリビアその人。

髪の色は染めているのか違うが、まだらの金茶の瞳はまさしくオリビア。


「レイド……」


「ああ、やっぱりここに……」


駆け寄って来たレイドが名を口走ろうとしたのを察したオリビアは、いつもしてきたように抱き寄せようとしたレイドの口を両手で塞いでこそりと早口でまくし立てた。


「私は今身分を隠しているの。私のことはリヴィって呼んで。事情は後で話すから」


訳が分からなかったがとりあえず頷いたレイドは、再会を喜んでオリビアの頬に小さくキスをすると、玉座の前に戻る。



「思わぬ再会が。彼女は私のフィアンセですよ」


「え!?」



3人の声が重なる。


オリビアも含めて。
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