冷たいアナタの愛し方
寝耳に水。

一体何の冗談なのかと呆然としてレイドを見上げたオリビアは、はにかんで見せたレイドが冗談を言っているようには見えずに怪訝な表情になった。


「本当…なの……?」


「君の父上たちは了承済みなんだ。知らなかったのはオ…リヴィだけってわけ」


「そんな…聞いてないわ!いつそんな約束を!?」


「2年前位かな。君が綺麗になり始めた頃だよ」


お世辞が上手でよく笑わせてくれるレイドは嫌いではない。

いつか誰かの元に嫁いで幸せな結婚をすることこそが今まで育ててくれた両親への恩返しだと思っていたので、相手がレイドならば――何の問題がないようにも思える。


…自分の心の声を除けば。


ちらりとルーサーとジェラールを盗み見たオリビアは、2人共絶句しているのを見て小さく息をついた。

ルーサーはともかくジェラールは何も知らない状態なので、一体どんな質問を浴びせてくるのかと構えていると――


「大国の国王が何故こんな小娘をフィアンセにと望むんだ?」


「リヴィはローレンの由緒ある家系の者。私たちは幼馴染とも呼べる仲で、彼女は利発で強くて美しい。私の妻として理想的だと思った次第ですが何か?」


「……」


「小娘とは何よ。確かにあなたやレイドとは歳が違うけど、私だって幸せな結婚生活を送ることが夢なんだから」



オリビアが声を荒げると、どこからか何かがドアに体当たりするような大きな音が何度も響いた。


衛兵たちが慌てて玉座の間を出て何事か調べようとした矢先に逆に部屋へ飛び込んできたのは、隣の部屋に閉じこめていたシルバーだ。

オリビアの悲鳴を聞いてやって来た天狼は、ゆったりとした足取りで身を低くしながら近付いて来ると、オリビアを囲むようにしてぐるりと身体に巻き込んで鼻の頭に皺を寄せた。


「ああまた大きくなったんじゃないか?リヴィ、ゆっくり話がしたいからふたりきりになれないか?…ああシルバー、お前も一緒に」


返事をする間も与えず肩を抱かれて出入口へ歩いて行くレイドを誰もが止めることができない。


あまりにも唐突なことが多すぎて。
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