冷たいアナタの愛し方
「困ったのが来たなあ…。しかも滞在だなんて…ジェラール、どうする?」


「…あいつは令嬢だったのか?レイドはハルヴァニアの国王だぞ」


「だからお嬢様だって言ったでしょ。まあ…拾ったのは偶然だったけど彼女にはウェルシュに会って訊ねたいことがあるっていう目的があったし」


「……令嬢…」


「うん、君の王妃にしてもおかしくない家柄だよ。どうする?レイドから奪う?」


「…………」


考えてもみなかった。

確かに品はあったし言葉づかいも丁寧だったが……令嬢?

あの口の悪いリヴィが?


ジェラールがむっつりした表情で黙っていると、ルーサーは肩を竦めて玉座から離れて出て行こうとする。

後を追ったジェラールはルーサーの肩を引いて立ち止まらせると、鋭い眼光を光らせた。


「今あいつらはどこに居る?」


「さあ、これから捜しに行くところだけど。レイドが滞在するのならここの客間に泊めることになるね。リヴィはまあ…君の離宮でいいと思うけど」


「リヴィが俺の離宮に泊まっていることが知られれば誤解が生じる。女を巡ってガレリアとハルヴァニアを衝突させる気か?」


「うーん、それも君次第かな。どうしたいのか君が決めるといいよ。国王になるんだから」


時々突き放してくるルーサーに歯噛みしつつも小さく舌打ちをしたジェラールはルーサーを追い越してスロープを早足で降りて行く。


…リヴィとレイドが親しげにしていた姿を見ていらいらしたのは事実だが…

オリビアのことはどうする?


未だにオリビアとリヴィの間を行ったり来たりしている自分自身の心の揺れに内心自分自身を殴り倒したくなったジェラールは、さらに早足になりながら方々リヴィを求めて捜し回る。


「くそ…どこに居るんだあいつは。…あの男…手を出したら殺してやる」


結局答えは出ないままだったが、それだけは決めていた。

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