冷たいアナタの愛し方
オリビアが2階に上がってきた時には、すでに笑顔を取り戻していた。

何も事情を知らないジェラールは、あっけらかんとした顔でコーヒーを手渡してきたオリビアの顔を凝視した。


「お前…ルーサーを怒らせたらしいな」


「別に怒らせてないし私も怒ってないから。それより即位式が終わったらレイドと一緒にローレンへ戻るけど、誓約書を書いてほしいの」


「誓約書…?」


只ならぬ言葉にジェラールが顔をしかめると、オリビアはソファに座っているルーサーの視線を感じながらジェラールのベッドの上で跳ねているシルバーを嗜めながら頷いた。


「ローレンを二度と攻めないこと。レイドにも同じことをお願いするつもりよ。…私がレイドに嫁げば誓約書なんか書かなくてもいいでしょうけど」


「……ガレリアも二度とローレンは攻めない。永世中立国を攻めた汚点を今から拭わなければならないんだ。そんなものは書かなくてもいい」


「そう?ならいいの。血迷ってまたローレンを攻めてきたら私があなたの前に立ちはだかってやるから。あなたなんか小指の先程の力を出せばやっつけられるんだから」


…実際それはリヴィの力を借りれば可能だっただろうが、その辺の事情も全く知らないジェラールは鼻を鳴らしてあざ笑う。


「女のお前に何ができる。やけにローレンを庇うが、まさか令嬢の立場を利用してローレンの王族に嫁ごうなんて考えていないだろうな」


「そうね、私の家なら可能でしょうけどね。生まれ育った国を守りたいと思うのは当然のことでしょ?まさかそういう感覚も持ち合わせてないのかしら、ジェラール坊ちゃんは」


相変わらずの憎まれ口。

むっとしたジェラールの顔を見て満足したオリビアは、人間の姿から元に戻る気配のないシルバーをベッドの上で正座させて手を握ると顔を覗き込んだ。


「シルバー…戻れるならいつもの姿に戻って。その姿はなんだか落ち着かないわ。できる?」


「うん、できる」


素直に頷いたシルバーが窓辺に寄って真っ白で大きな月を見上げる。

活発そうな青年の輪郭が揺らぎ、月と同じ真っ白な光に包まれた。
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