冷たいアナタの愛し方
シャワーを浴びて、少し読書をして眠る――それが日課のルーサーは、タオルで髪を吹きながら本棚の前に立って何を読もうか物色していた。


ここ最近ずっとばたついていて、ひとりの時間を楽しむ余裕もない。

それもこれもウェルシュがローレンを攻めたせいなのだが…

肝心のウェルシュの葬儀はすでに秘密裏に行われて王族の墓所に埋葬された。

国民にもそれを話さなければならないのだが、国民の間でもジェラール推進派が多かったので騒動にはならないだろう。


人々は英雄を好む。

そういった点ではジェラールは王子であれど自ら前線に飛び出て行って最前線で剣を振るってきた勇者だ。


ジェラールが王位を継ぐという知らせは、明日に触れを出して知られることとなるだろう。


幼い頃から恵まれた才を持っていたジェラールは期待されて…

自分は正妻の子ではないので王位継承権は真っ先に後手に回された。


それでも軍師としての才を父王に見出されてジェラールのお目付け役も含めて彼を補佐することができたのはラッキーだった。


「母上…」


お気に入りの本の間に挟んでいた一枚の肖像画を取り出したルーサーは、よく似た顔立ちの優しげな女性が描かれた絵を見つめる。


波打つウェーブの金色の長い髪に、目元の下がった優しげな美女――

その腕に抱かれることなく出産後死んだ母は、果たして幸せだっただろうか?


奴隷としてこの国に捉われて幽閉されて…幸せだっただろうか?


物思いに耽っていると、とても小さなノック音がドアから聞こえた。

…離宮のある場所に入れる者は限られている。


ウェルシュ亡き今、ここに入ることのできるのはジェラールと自分と…


「…オリビア…?」


まだ滴が垂れている髪をかき上げてドアを開けると、そこにはやはりオリビアが立っていたのだが…どこか、何かが違う印象を受けた。


「こんな時間に…どうしたの?」


「あなたに会いに来たのよ。ルーサー…」


普段のオリビアが持ち得ない妖艶な笑み。


これはオリビアではない、とすぐに気付いたルーサーは、平静を装って微笑むと、家の中へとオリビアを招き入れた。
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