冷たいアナタの愛し方
“ガレリアに連れて行ってくれるのよね?”
そう念を押してルーサーからの承諾を得たオリビアは、最も難解で言うことを利かないであろうシルバーをガゼルの家から連れ出して階段に腰かけた。
回りをふわふわ飛んでいる蝶にからかわれて飛び跳ねているシルバーが落ち着くまでじっと待っていると、中からガゼルが出て来た。
まるで監視だと言わんばかりに手すりに腰かけて腕組みをして睨んでくるガゼルを睨み返したオリビアは、ぷいっとそっぽを向いてつんけんした口調で毒を吐く。
「見張りなんかしなくても悪いことなんてしないわよ。明日にはルーサーと一緒にここを出て行くからこれ以上迷惑はかけないわ」
「…ガレリアはこことは比べ物になんねえくらい危険で命の保証はできねえ。親の仇っていったら響きはいいけど、お前が死んだら元も子もねえ。ローレンを継ぐのはお前なんだぞ」
「お父様たちが死んだとは限らないわ。私はそれを直接ウェルシュに問い質しに行くの。あなたには関係ないでしょ」
「く…っ。このガキ…よくも蛮族の長の俺にんな口利きやがったな」
「痛い!ちょっとやめてよほっぺ引っ張らないで!」
手加減はされていただろうが、ガゼルに両頬を引っ張られて声を上げるとそれまで遊んでいたシルバーが唸り声を上げて駆け寄って来た。
チャンスだと思ったオリビアは、ガゼルの手を払いのけてシルバーの両耳を両手で優しく包み込むと、金色の瞳をじっと見つめて優しい声で諭した。
「私ね、ガレリアに行くの。お前は連れて行けないのよ。だからひとつお願いを聞いてほしいの」
「わんわんわんわん!うぅぅ、わんわん!」
「シルバー、聞いて」
「ぎゅうんきゅうん、わんわんわん!」
狂ったように吠えて話を聞こうとしないシルバーは頭がいい。
離れ離れになるのだと悟るとオリビアの声をかき消すように吠えてオリビアの脇の下に顔を突っ込んできゅんきゅん鼻を鳴らした。
…ただでさえ別れはとても苦しくて切ないのに、こんな風に寂しがられて平気なはずがない。
「シルバー…お前にひとつ使命を与えるわ」
それまで垂れていた尻尾が跳ねるように立ち上がった。
オリビアの声に含まれた何かに反応して、脇の下から顔を出すと、脚を揃えてオリビアをじっと見つめた。
「ありがとうシルバー。いい子ね…」
別れはつらいけれど、きっとまた再会できるはず。
だから、つらくない。
そう念を押してルーサーからの承諾を得たオリビアは、最も難解で言うことを利かないであろうシルバーをガゼルの家から連れ出して階段に腰かけた。
回りをふわふわ飛んでいる蝶にからかわれて飛び跳ねているシルバーが落ち着くまでじっと待っていると、中からガゼルが出て来た。
まるで監視だと言わんばかりに手すりに腰かけて腕組みをして睨んでくるガゼルを睨み返したオリビアは、ぷいっとそっぽを向いてつんけんした口調で毒を吐く。
「見張りなんかしなくても悪いことなんてしないわよ。明日にはルーサーと一緒にここを出て行くからこれ以上迷惑はかけないわ」
「…ガレリアはこことは比べ物になんねえくらい危険で命の保証はできねえ。親の仇っていったら響きはいいけど、お前が死んだら元も子もねえ。ローレンを継ぐのはお前なんだぞ」
「お父様たちが死んだとは限らないわ。私はそれを直接ウェルシュに問い質しに行くの。あなたには関係ないでしょ」
「く…っ。このガキ…よくも蛮族の長の俺にんな口利きやがったな」
「痛い!ちょっとやめてよほっぺ引っ張らないで!」
手加減はされていただろうが、ガゼルに両頬を引っ張られて声を上げるとそれまで遊んでいたシルバーが唸り声を上げて駆け寄って来た。
チャンスだと思ったオリビアは、ガゼルの手を払いのけてシルバーの両耳を両手で優しく包み込むと、金色の瞳をじっと見つめて優しい声で諭した。
「私ね、ガレリアに行くの。お前は連れて行けないのよ。だからひとつお願いを聞いてほしいの」
「わんわんわんわん!うぅぅ、わんわん!」
「シルバー、聞いて」
「ぎゅうんきゅうん、わんわんわん!」
狂ったように吠えて話を聞こうとしないシルバーは頭がいい。
離れ離れになるのだと悟るとオリビアの声をかき消すように吠えてオリビアの脇の下に顔を突っ込んできゅんきゅん鼻を鳴らした。
…ただでさえ別れはとても苦しくて切ないのに、こんな風に寂しがられて平気なはずがない。
「シルバー…お前にひとつ使命を与えるわ」
それまで垂れていた尻尾が跳ねるように立ち上がった。
オリビアの声に含まれた何かに反応して、脇の下から顔を出すと、脚を揃えてオリビアをじっと見つめた。
「ありがとうシルバー。いい子ね…」
別れはつらいけれど、きっとまた再会できるはず。
だから、つらくない。