冷たいアナタの愛し方
翌日オリビアはエイダに染髪するための粉を見せられて目を丸くした。


「なにこれ」


「あんたのその髪の色は目立つんだ。これで髪の色を染めればウェルシュに目をつけられてもあんたがローレンの王女だってことには恐らく気付かないはず。その瞳の色はどうしようもないけどね。あたしが染めてやるからこっちにおいで」


どうしたものかとソファに座って剣を磨いていたルーサーを見たオリビアは、ルーサーが頷いたので素直に聞き入れてバスルームへと向かう。

やけに従順なオリビアの態度にむすっとしたガゼルはいらいら足踏みをしながら悪態をついた。


「お前たち…いい仲なのか?」


「…え?違うけど…」


「なんであの女はお前の言うことは素直に聞いて俺の言うことは全然聞かねんだよ。むかつくんだよ」


「オリビアは素直に接すれば素直に返すし、悪態をつけば悪態で返す。そういう性格なんじゃないかな」


ルーサーと話している時のオリビアは笑顔も見せるし声も明るい。

だが自分と話している時は笑顔も見せないし声には棘がある。

どうしても納得のいかないガゼルは、床に寝そべっていたシルバーに主の不満をぶつけた。


「お前の主はぜんっぜん可愛くねえのな。角笛吹いても助けに行ってやんねえぞ」


言葉がわかるのか、喉をぐるぐる鳴らして威嚇するシルバーはゆらりと身体を起こして鋭い爪をにゅっと出した。

思わず後ずさりをしたガゼルは舌打ちをしてバスルームに向かい、オリビアの様子を見に行く。


「なんなんだよ。俺にも笑えっつーの」


ノックもせずにバスルームを開けると、タンクトップとスカート姿のオリビアが鏡の前に座って茶色の染料で髪を染められていた。

背筋をぴんと伸ばして凛としたオリビア。

悪態をつこうとしていたガゼルは言葉を失い、オリビアに見惚れる。


「お前…何者だ?」


ただの女ではない。

強くそう思わせた。
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