冷たいアナタの愛し方
ルーサーたち王族の離宮は、ガレリア城の1階奥に続いている細い道を通り、王族しか所有していない鍵を使用して扉を開けると、飛び込んできたのは一面綺麗に刈られた芝生だった。

そして東西南北に様々な建築様式の建物があり、ルーサーは北に建てられた扇状の白い屋根と横長な1階建て。

とてもシックな趣きで、やっと2人きりになれたオリビアはどきどきしながらルーサーのマントの袖を握った。


「私…男の人の家に行くのってはじめて」


「まあそう意識しないで。…っていっても無理だよね。僕も自分の離宮に女の子を招くのははじめてだから」


「え、そうなの?ルーサー…モテそうなのに」


「一応王子っていう立場だからアピールしてくる子は多いけどね。ちなみに散らかしてはないんだけど、掃除してくれるとありがたいな」


――背の高いルーサーの後ろを歩いているだけでどきどきしてしまっているオリビアは、陽光を反射する金色の髪に見惚れながら頷いた。

そしてまた同じ鍵でロックを解除して中へ入ると――掃除するどころか塵ひとつ落ちていないほどに綺麗で、思わず脚が止まる。


「掃除するところなんてひとつもないっぽいんだけど…」


「うん、そうなんだけど見えてないところは意外と汚いよ。ああ、適当に寛いでて」


玄関から奥へ進むとまずはキッチンがあり、その奥にリビング、そして寝室へと続いていた。

とりあえずソファに座ってみようと思ってリビングへ行くと――クローゼットの前に立っていたルーサーが鎧と厚手のシャツを脱いで上半身裸になっている姿に遭遇したオリビアは――


「きゃ…きゃぁーーっ!」


「!?オリビア!?どうし…」


「こ、来ないで来ないで!ルーサー、今裸だから!」


「裸って言ったって…ご、ごめん、レディーの前で…あっちで着替えて来るよ」


ガレリア公式の礼装である白のカッターシャツと黒いネクタイを持って慌てて寝室に駆け込んだルーサーだったが…オリビアはその場でぺたんと座ったまま両手で顔を覆って赤面。


「な、なんか…すごく…たくましかった…」


見るものはばっちり見ていた。
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