冷たいアナタの愛し方
「ごめんごめん、レディーの居る前で失態をしちゃったね。男社会で生きてるから失念してたよ」


「う、ううん、私こそ悲鳴上げちゃってごめんなさい。そ、その…意外とたくましいのね」


シャツを羽織り、ネクタイを締めてリビングに戻って来たルーサーは、俯いて顔を上げないオリビアの耳が真っ赤なことに気づいてくすりと笑った。

オリビアは兄が数人居たはずだがこの反応…初々しすぎる。


「まあ何度も戦を経験してるし、自然と鍛えられるんだ。むきむきになるのは勘弁だけど」


そして自らキッチンに立って紅茶を淹れてくれているルーサーの横に立ったオリビアは、数多くの本棚と膨大な本が並べられているのを見ると、ルーサーを見上げた。


「本がすごく多いのね。勉強家なの?」


「いずれはジェラールが王になれば僕が補佐という立場になるだろうから今のうちから勉強しておかないと。彼は本当にすごいんだよ」


「でも私、垂れ目で怖い人…じゃなかった…ジェラールにいじめられた思い出しかないわ」


「彼は気に入った人をいじめる傾向があるんだよ。だからオリビアのことはものすごく気に入ってたはず」


「そうは見えなかったけど。ま、とりあえずここで生活してれば会えるわよね。ルーサー、私のことはちゃんとリヴィって呼んでね」


「はいはい」


ブルーベリーを一粒紅茶に入れてスプーンで潰して飲んでいるルーサーを真似て同じことをやってみると、とても豊潤で甘酸っぱい味が口に広がった。

初恋の人と至福の時を過ごしたオリビアは今自分が奴隷だという立場を忘れずに、ルーサーに断りを入れてあちこち棚を開けて掃除用具を発見すると、気合を入れる。


「あなたは座ってていいわよ、私頑張る!」


「じゃあ僕は窓を開けるよ。よろしくお願いします」


笑いかけてくれたルーサーにぽっとしたオリビアは、ぱっと顔を逸らして赤い顔を見られないようにした。
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