冷たいアナタの愛し方
会食の間に顔を出したのはルーサーだけ。

ウェルシュは離宮に居ることが確認されているが、ジェラールはまだ戻って来ていないという報告があった。

ものすごく広い会食の間の中央には無駄に横幅のある真っ白なクロスが敷かれたテーブルがあり、ルーサーは肩を竦めて適当な場所に腰を下ろすと集まってきた給仕係やハーマン宰相に笑いかけて頬杖を突いた。


「亡き陛下の意志をウェルシュは継ぐつもりがないってことかな」


「ルーサー様…まだウェルシュ様が国王におなりになるとは決まっておりません。亡き陛下はジェラール様を推しておられましたのでそのご遺志を尊重すべきです」


「そうはいってもジェラールまで殺されるわけにはいかないよ。ウェルシュが陛下と王妃を暗殺したことはもうわかっているんだから」


「ルーサー様…人払いをしているとはいえご発言には注意すべきです」


小さくため息をついて、ひとりきりの食事をしているルーサーを集まった給仕係の列に加わって見つめていたオリビアは、ローレンで家族といつも賑やかに食事をしていた時のことを思い出してうるっときてしまった。

懐かしくて、そしてルーサーが可哀そうで――俯いていると、ルーサーは皆に聞こえるように少し大きめの声量でハーマンと給仕係たちに呼びかける。


「今日僕が連れてきた奴隷だけど、僕の離宮をものすごく綺麗にしてくれたんだ。これからも頻繁に借りていくから覚えておいて」


「ルーサー様…そのような贔屓はお止め下さいと…」


「何か問題でもあると?ウェルシュだって今までどれだけの数の奴隷に手を出してきたと思ってるの?僕とウェルシュを同じにしないようにね。あんな悪党じゃないから僕は。明日から給仕係に就いてもらって」


給仕係は奴隷の中でも最も誉れ高い役割だ。

見目の美しい男女が選ばれることが多く、またウェルシュたち王族の目にもつきやすいので気に入られれば男女の関係となって特別扱いしてもらえるかもしれないので、皆必死になって良い働きを見せる。


オリビアに視線が集まり、一瞬うろたえたが深々と頭を下げて理解したことを伝えた。


「ジェラールもきっと気に入るから。僕はそう確信してるよ」


そう言って笑いながら赤ワインを口に含んだ。
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