冷たいアナタの愛し方
ルーサーの食事が終わると、給仕係の奴隷たちは後片付けをしてカートに乗せると、一同頭を下げて会食の間を出なければならなかった。

これから皿洗いをしていくつかの仕事を教えてもらってあの狭い部屋に戻らなければならず、ルーサーをこうして間近で見れるのももしかしたら1日に1回あるかないか――

少し不安になったが、会食の間を出て行く時にちらりとルーサーに視線を遣ると目が合い、小さなウィンクを投げてきた。


「…ふふっ」


つい笑ってしまって前を歩いていた奴隷に一瞥されてしまったオリビアは、そのままスロープを下って地下へ行くと――早速奴隷たちに取り囲まれた。


「あんたルーサー様のなんなの?なんであんなに親しくしてもらってるのよ」


「私あの人に拾われたの。だからじゃないの」


「ルーサー様は元々私たち奴隷にも優しいけどあんたは完全に特別扱いされてたわ。どうしてよ」


グレーのローブにフードを深く被った数人の女奴隷たち。

表情はわからなかったが怒っているのは確かだったので、オリビアは静かにフードを払いのけると素顔をさらして彼女たちを自然に圧倒した。


「理由は私にもわからない。私がローレンで両親を失って惨めにしていたからかしら。ガレリアが攻めてきて失ったんだもの。罪滅ぼしじゃないのかしら」


遠い目をしたオリビアの金茶の瞳が翳り、嘘ではないと感じた女奴隷たちもまたフードを背中側に払って素顔を見せた。

…やはり奴隷といっても皆美しく、その中でもオリビアを責めていた中心人物――ブルネットの髪を緩く三つ編みにした女が目を見張る。


「あ、あんた……い、いえ……あなたはもしかして……オリ…」


「私の名前はリヴィ。ねえ、ちょうどいいから色々案内して。いいでしょ?」


自分を知っている――

動揺する女をキッチンから連れ出したオリビアは、狼狽しておどおどしてしまった女に優しく声をかけた。


「私のことを知っているの?」


「は、はいオリビア様。私もローレンの者で、数年前違う街で捕らわれて…あなたがどうしてここに?陛下たちは亡くなったんですか!?」


「わからないの。それを調べに来たのよ。ねえお願いだからみんなには私の正体は言わないで。いいわね?私のことはリヴィと呼んで」


「はい。リヴィ様、ご協力させて頂きます」


「その態度もやめてね。あなたの部下として働きながら機会を窺うわ。なんでもやってみせるから教えて」


レティと名乗った女はくすりと笑って小さく頭を下げた。
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