冷たいアナタの愛し方
ルーサーが恐れていたことは…現実になってしまった。


ウェルシュがオリビアを気に入ってしまったのだ。


ぽうっとした顔でナプキンを床に落としたことにも気付かず、よろけながら立ち上がると汚いものでも見ているようなオリビアの前に立った。

だがオリビアは物怖じせずにウェルシュを睨みつけているし、ウェルシュは明らかに高揚した顔でオリビアに見入る。

間違えば今命を絶たれてもおかしくない状況に、ルーサーはオリビアとウェルシュの間に立ちはだかるとオリビアを背中に庇った。


「兄上…お止め下さい」


「なんだ、まさかお前が拾ってきたっていうのはこのリヴィとかいう女なのか?……ふ、ふん、見る目はあるな。おいお前、よく顔を見せろ」


「いやよ。とにかく毒味はやめさせて。どうしてもっていうなら私がやるから」


「リヴィ!」


ルーサーが非難の声を上げたが、オリビアは毒の耐性がある。

なんとかしてルーサーを押しのけてオリビアをじっくり見ようとしているウェルシュに嫌悪感を感じたルーサーは、押し殺した声で耳元で囁いた。


「彼女に何かすると…僕も黙ってはいませんよ」


「な、なんだと?お前…妾腹の子の分際でよくも世継ぎの俺に…」


「兄上は世継ぎではありません。亡き陛下の跡を継ぐのは…ジェラールです」


ウェルシュを封じ込めている間にオリビアはテーブルに向かってしまい、レティに笑いかけて大丈夫だと示した。


「じゃあ…頂きます」


ナイフとフォークに手を伸ばそうとした時――会食の間の扉が大きな音を立てて開いた。


そして予期せぬ者との出会いが、オリビアを待っていた。
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