冷たいアナタの愛し方
「この髪の色…染めてるの?白髪よりも銀髪に近いけど…」


「わからない。ジェラールが目覚めたら色々聞いてみないと…」


大きな犬のような狼のような魔物に背負われたジェラールと、ジェラールが落ちないように両サイドから支えているルーサーとオリビアが緩やかなスロープを下って離宮へと急ぐ。

ローレンで待っていてと言ったはずのシルバーがここまで勝手に来たことも叱らなくては、と思いながらもとても嬉しくて、またちらっと見てきたシルバーに優しい声でねぎらった。


「ここまで大変だったでしょ?後でご飯あげるからね。私の部屋に来る?狭いけど一緒に寝よっか」


「わん!わん!」


つい興奮して吠えると、吹き抜けの回廊にシルバーの吠え声が響き渡った。

まだジェラールの顔をよく見ていなかったが…さすがは兄弟というべきか、ジェラールとルーサーは顔立ちがよく似ている。

だがやはりジェラールはちょっと冷たい印象で、ただ金髪よりも今の銀髪が似合っているように感じていた。


「さあ着いたよ。ジェラールの離宮は2階建てなんだ。2階に寝室があるはずだからそこに運ぼう」


「ええ。シルバー、落とさないようにね」


オリビアの命令を忠実に聞くシルバーは、スペアの鍵を預かっていたルーサーがドアを開けるとゆっくりした足取りで階段を上がってベッドの前までたどり着いた。

ルーサーはジェラールの鎧を脱がせて血が滲む包帯を解くと、傷の深さに顔をしかめる。


「これはひどい…!ジェラール…ウェルシュにやられたんだね?だけどちゃんと治療がされているし、安静に寝ていればすぐに良くなるかも」


「じゃあ私が看病してもいい?…昔なじみの誼で」


「うん、それは助かるよ。離宮の鍵を閉めてここに閉じ籠もっていればウェルシュに追いかけ回されることもないだろうし」


「え?なんで私がウェルシュに追いかけ回されなくちゃいけないの?」


啖呵を切ったことをすっかり忘れてしまっているオリビアがきょとんとすると、ルーサーは噴き出して救急箱から包帯を取り出して笑った。


「晴れてお気に入りになったみたいだったからいつ襲われてもおかしくないってこと」


「いやよあんな酒樽なんかに。私お湯を沸かしてくるわね」


部屋を出て行くオリビアにぴったり寄り添ったシルバーも一緒に階段を降りて行くと、ルーサーは眠っているジェラールの耳元で囁いた。


「…君の花嫁がやって来たよ」
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