冷たいアナタの愛し方
苦しげな息を上げていたジェラールが徐々に落ち着いて寝息が聞こえるようになった時、オリビアは窓辺に寄って星空を見上げた。


いつ目覚めるかわからないし、ずっとここに居てもいいものかと思ったが…ここに居ればルーサーと頻繁に会える。

奴隷の立場としては逸脱した行為だったが、何か言われたら“ルーサー王子の命令だから”と言い張る口実があるので胸を張ることにした。


「あれ…?下に居るのは……酒樽?」


ジェラールの屋敷の回りをうろうろ歩いているのは…ウェルシュだ。

いやなものを見てしまったと目を逸らそうとした時、ウェルシュに気づかれてしまって大きく手を振って来たので思いきり無視してカーテンを閉める。


「ふぁ…眠たくなってきちゃった…。ちょっと寝ようかな…。シルバー、こっちにおいで」


2人掛けのソファがあったのでそこに横になりつつジェラールから目を離さないように注意をした。

実は内心は…男前な2人の傍に居られてうきうきしていたのだが――本懐をまだ遂げていない。

ジェラールが回復すれば、自分を気に入ったらしきウェルシュに近付いて情報を聞き出さなければ。

そしてジェラールからも。


「シルバー…床で大丈夫?ソファは狭いから一緒に寝れなくてごめんね」


傍らで伏せをして銀色の瞳でじっと見上げてきながら尻尾を振るシルバーの頭を撫でたオリビアは、慣れない奴隷の仕事で疲れているせいか、あっという間に眠ってしまった。

シルバーはそんなオリビアの代わりにジェラールを見張り、1階からルーサーが戻って来ると、ソファで眠ってしまっていたオリビアの身体に毛布をかけて椅子を引き寄せてジェラールの傍に座る。


「僕たちが捜していたオリビアがここに居るんだから、目が覚めたら驚くだろうね」


今は髪の色が違うし、面影はあれどあれから7年経っている。

果たしてジェラールはオリビアに気付くのだろうか?

意地悪心がむくむくを頭をもたげて、くすくす笑いながら額に滲む汗をタオルで拭ってやった。
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