冷たいアナタの愛し方
傷口が痛い…

身体がだるくて指先すら動かない…


そんな状況の中、ジェラールはなんとか目だけを開けて辺りを見回した。

視界がぐにゃぐにゃ歪んでよく見えなかったが…そこが自分の離宮だとわかるとほっとして情報を整理してみる。


ローレンでウェルシュの暗殺命令を受けた側近から急襲されて傷を負い、その後誰かに助けてもらい、そしていつもオリビアの傍に居た犬のような魔物が現れて…

そこからどうだったかよく覚えていないが、どこかの街に寄って休息した後ガレリアに向かい、高熱に襲われてからの記憶が無い。


「ルー、サー……」


すぐ傍には脚を腕を組んで椅子に座りながら居眠りをしている兄と、ちゃっちゃっと爪音を立ててすぐ傍に寄って来たシルバー。

そしてお気に入りの白いソファには…知らない女が寝ている。

この離宮にはルーサー以外立ち入りを許したことがないというのに、どこの誰だか分からない女に勝手に踏み入れられて怒りが込み上げたが、すぐに思考能力を失ってしまった。


とりあえず、ここは安全だ…帰って来た。


これからすべきことは、ウェルシュを締め上げて自白させて、国から追放すること。

両親も殺した挙句自分にまで手をかけた長兄を一切許さないという思いだけでここまでたどり着いたのだ。


「……オリ…ビア………」


結局会えなかった女の子。

シルバーだけここに連れて来てしまって、寂しい思いをしているのではないだろうか。


いや…あの気の強いオリビアはそんな殊勝な子ではない。

7年前から変わっていないのであれば、今も嫁に行き遅れの口の悪い女の子のはず。


「……すぅ…」


また眠ってしまったジェラールの傍を離れたシルバーは、オリビアの身体からおちた毛布を咥えて身体にかけ直すと、前脚に顎を乗せて伏せをしながらジェラールを観察していた。


オリビアはどんな反応をするだろうか。

ジェラールは、オリビアに気付くだろうか?


意外と沢山遊んでくれた記憶を忘れていないシルバーは少しだけ尻尾を揺らして欠伸をした。
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