冷たいアナタの愛し方

レティに馬屋の世話を任されていたため、もし誰も世話をしていなかったら…と不安を覚えたオリビアは、すくっと立ち上がってドアノブに手をかけてルーサーに呼び止められた。


「あれ？どこに行くの？」


「レティに馬たちの世話を任されているの。私ちょっと行ってくるわ」


「駄目だよ、ウェルシュが…」


「シルバーが居るから大丈夫。ねっ、シルバー」


「うわんわん！」


主の期待に応えたいシルバーが元気の良い返事をすると、それでも心配なルーサーは2階を見上げる仕草をしつつも本を閉じてテーブルに置くと、立ち上がった。


「じゃあ僕も一緒に行くから。ジェラールはあれでも結構回復してきてると思うし何かあってもウェルシュくらいなら撃退できるはずだし」


「心配してくれてありがとう」


素直な気持ちには素直に返すオリビア。

悪態を突けば悪態で返すことにジェラールは気付いていないようだが、オリビアの性格をすでに把握したルーサーがにこやかな笑顔を浮かべてオリビアと共に外へ出ると、まるで待ち構えていたようにウェルシュが駆け寄って来た。


「お、おい奴隷！やっと出て来たな！」


声をかけられたが聞こえないふりをしてつんと顔をそらして城の方へ歩き出すと、丸々と太った酒樽は慌てて小走りについて来た。

だがオリビアに声をかけるどころか、唸り声を上げて後ずさりしながら警戒してくるシルバーに阻まれて姿を見ることすらできない。


「それはジェラールの犬だろ！？奴隷！俺の話を聞け！俺は王になる男だぞ！」


「……」


完全無視で突き進むオリビアの態度は清々しく、ルーサーは王族専用の鍵を使って重たい扉を開けるとオリビアとシルバーと通してから入り口を塞ぐようにしてウェルシュと真向かいになった。


「兄上…オリビアを気に入る気持ちはわかりますが、今はジェラール付きの奴隷です。僕がそう決めました」


「な、なんだと？あいつ…本当に生きて…」


「ええ。一体誰にやられたんでしょうね」


冷や汗をだらだら流しているウェルシュの鼻先で扉を閉めてさらに鍵も閉めたルーサーは、ぺろっと手を舐めてきたシルバーの耳の後ろを掻いてやりながら肩を竦めた。


「ウェルシュで決まりっぽいね。ああもうほんと…最低の兄だな…」


オリビアが餌食にならないように気を付けなければ。