冷たいアナタの愛し方
ルーサーが2階へ上がると、ジェラールはむすっとした表情で垂れた目を吊り上げていた。


「遅い。どこに行ってたんだよ」


「リヴィとちょっと馬屋にね。彼女は奴隷だから他にも与えられた仕事があるんだよ。まあ…完全に君専属の奴隷にするというのなら話は別だけど」


「…お前、意味わかって言ってるのか?」


ジェラールが値踏みするような上目遣いでルーサーを睨む。

何を言おうとしているのかわかったルーサーはソファに腰かけて脚を組むと、言わんとしていることを敢えて口にする。


「専属の奴隷は夜の相手もする、のことかな」


「…あんな口の悪い女なんか抱かない。お前のお気に入りなんだろうが。なんで俺に…」


「なんでかな。彼女は気品があるし、奴隷という立場ではなくて、こう…もっと身分のある地位に立つ人だと思うんだよね。たとえば王になった君の隣とか」


ジェラールが噴き出した。

傷に響いたのか腹を押さえて顔をしかめていたが笑いは収まらず、ルーサーに向けて乾いたタオルを投げつける。


「あれが王妃に?お前確かオリビアについてもそんなこと言ってなかったか?」


「オリビアはどこにいるかわからなくて行方不明だし、この際リヴィでもいいんじゃないかな。まあよく考えてみて。あとちゃんとリヴィの話も聞いてやって。彼女は母国について憂いてることがあるんだ」


――元々ルーサーは優しい男だが、殊更女奴隷を庇う節があるので、いずれ王になる自分の隣に立つ男と決めているルーサーを嗜めようと口を開きかけた時――


「冷たいお水に替えてあげるわ。言っておくけど身体は拭かないから」


シルバーと共に部屋に入って来たオリビアの手には氷水の入ったボウル。

…優しいのか冷たいのか、はたまた気まぐれなのか。


ジェラールは口を閉めてむすっとすると、血が滲む包帯を指した。


「じゃあこれを替えろ」


とことんいじめ抜くつもりだった。
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