冷たいアナタの愛し方
包帯を替えろと言われたオリビアは、ぷいっと顔を背けてテーブルにボウルを置くと、背中を向けて無言の拒絶を示した。


「俺の言葉を聞いていたか?包帯を替えろ。今すぐだ」


「…ルーサー王子にしてもらって」


「俺はお前に命令している。奴隷ならさっさと動け。早くしろ!」


怒鳴られてびくっと身体を震わせたオリビアは、きゅうんと鼻を鳴らすシルバーの頭を撫でて1階へ駆け降りた。

もちろんシルバーもついて来たのだが…大人の男に怒鳴られた経験などないし、ましてや怪我の手当てもしたことがないのでおろおろするしかない。

ルーサーの離宮のように物の少ない部屋を見回して救急箱らしきものを見つけたオリビアは、救急箱を開けて消毒液を取り出して、瓶に書いてある必要最小限の説明書きを読む。


「傷の手当の前に患部を清潔にって書いてあるわ。……身体は拭かないんだから。ルーサーに頼んで…」


「僕はしないよ」


「!ルーサー…どうしてそんな意地悪を言うの?私できないわ。お嫁に行くまで男の人の身体なんて触れない」


「ここで色々情報を集めるのなら必要なことだよ。ウェルシュに近付くつもりならなおさらレベルが段違いで違う要求もしてくるだろうし。この前教えた通りにやれば大丈夫だから」


恨みがましい上目使いで窓際に立っているルーサーを睨んだオリビアは、救急箱を胸に抱えて2階へ上がっていく。

シルバーはオリビアをしゅんとさせてしまったルーサーを数秒間金色の瞳でじっと見つめた後、オリビアの後を追って行った。


「…さて僕は読書の続きでもしようかな」


ルーサーはのんびりしたものだが――オリビアはものすごい音を立ててドアを開けると、救急箱をジェラールにずいっと差し出した。


「持って来たわ。まずは身体を拭いて。お湯を持って来るから…」


「お前がやれ」


「何度言わせたらわかるのよ!私はしないんだから!」


「お前が、やれ」


拒絶を許さない真っ直ぐな瞳に射抜かれたオリビアは、ここに居てとシルバーに命令して再び1階へと降りていく。

ジェラールはベッドの近くで伏せをしたシルバーに手を伸ばして声をかけた。


「お前の主は…オリビアはどこに行ったんだ?」


シルバーは尻尾を1度だけゆっくり揺らすと、前脚に顎を乗せて寝たふりをした。
< 96 / 187 >

この作品をシェア

pagetop