冷たいアナタの愛し方
女は度胸。

もう腹を括るしかないと決心したオリビアの瞳は…据わっていた。

今度は違うボウルに沸かしたぬるま湯を注いで慎重な足取りで2階までたどり着くと、瞳が据わったままジェラールににっこりと笑いかける。

少し…いや、少しどころかかなり様子の違うオリビアに眉を潜めたジェラールは、身体を起こしてくっと唇を吊り上げた。


「なんだその顔。傷口に塩でも塗るつもりか?」


「身体を拭いてあげるわよ、ジェラール坊ちゃん」


「…坊ちゃんとか言うな。王子と呼べ」


「ジェラール坊ちゃんは甘えん坊なんだから。女の子の奴隷に身体を拭いてほしいなんて万年発情期なのかしら」


「……な…なんだお前…」


薄汚れたローブを腕まくりして不吉な笑みを絶やさないオリビアは、ベッドに膝をついて身を乗り出すと、ジェラールが着ているシャツのボタンを外しにかかる。

呆気に取られているジェラールの顔にいい気味だと思いつつも、根本的には恥ずかしいし触るのも見るのもいやだが…なんとかこの男をぎゃふんと言わせてやりたい。


オリビアは自分なのに。

気付かないこの馬鹿に制裁を食らわせなければ。


「はいシャツから腕を抜いて下さいね。ちょっと痛むかもしれないけど身体を拭かないと消毒できないからじっとしてて下さいね」


息を詰めてじっと見つめられているのがわかった。

だがオリビアはけしてジェラールと目を合わさずに唇を引き結んで包帯に手をかけてゆっくりと外してゆく。


その間にも、鍛えられた腕や胸、腹筋――こんな間近で男の裸を見たことのないオリビアは、次第に自分の手が震えてきたのを感じながらなんとか包帯を全て外した。


「…!ひどい……」


オリビアが引きつった高い声を上げると、シルバーが心配して身体を擦りつけてきた。

傷口は縫合されているが…大きく裂けて血が滲んでいる。

背中から刺されたのか傷口は貫通しており、あまりの惨さに目を逸らした。


「…なによじっと見ないで。ちゃんと拭くわよ」


「……早くやれ」


声色が少し優しくなった。


この男は冷たいのか優しいのか、わからない。

オリビアは少しだけ、ジェラールに興味を持った。
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