冷たいアナタの愛し方
清潔なタオルをぬるま湯に浸して、ジェラールの右腕を取ってゆっくり拭いてみた。

文句はなく、表情を窺うと怒った風でもなくほっとして固い腕だなと思いながらどんどん拭いてみた。


「…男の人の腕って…みんなこうなの?」


「…はあ?どういう意味だ」


「なんか…節くれ立ってるし…血管浮き出てるし……固いし…」


「大体こんなものだろ。お前…今まで男に触ったことがないのか」


逆に問い返されて、しかもそれが図星だったのでむっとしたオリビアは、少し強めにごしごし拭きながらも素直に頷く。

兄たちにはよく遊んでもらったが、養女だったので一緒にお風呂に入ったりしたこともない。

ましてや家庭教師がついていたので、同い年が通うスクールにも行ったことがないために友達と呼べる存在はシルバーしか居なかった。


「だから何よ、あなたに関係ないでしょ」


「そんな態度だったら男にはさぞモテなかっただろうな。違うか?」


「私が聞いたのにどうして私が質問されてるのよ。あなたこそそんなだったらモテないんでしょうねえ。お坊ちゃんなのに可哀そうにね」


オリビア以上にむっとしたジェラールは、左腕に移動したオリビアの顎を掴むと引き寄せてにやりと笑った。


「俺はお坊ちゃんだから、誘いを断る女なんか居ない。ちなみにお前に誘われたとしても断る」


「ふん、私だってお断りだわ」


垂れ目なので少し微笑んだりすれば、甘い顔立ちなのは間違いない。

だが中身が最悪だ。


オリビアは決死の覚悟を決めて筋肉質の固い胸をタオルで拭き、黙々と手を動かし続ける。

ジェラールはルーサーからのアドバイスを思い出して、お座りをしてじっと見つめてきているシルバーの耳を掻いてやりながら呟いた。


「…ローレンのことを聞きたいか?」


「…え…?」


オリビアが顔を上げる。

見たことのあるような金茶の瞳が、7年前に出会った少女を彷彿とさせて僅かに微笑を浮かべながら口を開いた。
< 98 / 187 >

この作品をシェア

pagetop