冷たいアナタの愛し方
「ローレンで知り合いを捜している時に大体は見て回った。何か聞きたいことがあるんじゃないのか」


…はじめてまともなことを言われたオリビアは、手を止めて両手でタオルを握り締めた。

ジェラールはタオルを握り締めすぎて手が真っ白になっているオリビアを見つめつつ、答えを待つ。


ここで両親のことを聞いていいのか――

だがそれでは身分がばれてしまうし、自分がオリビアだということも同時にばれてしまう。


オリビアはタオルをぬるま湯に浸して絞ると、なるたけ平静を装って傷口の付近を拭った。


「…両親や兄たちが行方不明なのよ。……王宮に勤めていたんだけど、王宮には行ってみたの?」


「……行った。中にも入った」


思ってもみなかった驚きの返答だったので、手に思わず力がこもってしまったためにジェラールが顔をしかめる。

慌てたオリビアは傷口を刺激しないように細心の注意を払いつつも、声を震わせてしまった。


「中は…どうなっていたの?」


「…真っ暗だった。死体が沢山転がっていた。地下に何らかの形跡があったから行ってみたが…そこでウェルシュの腰巾着から刺された」


「何らかの形跡…?じゃあ…その…王様たちは…?」


ジェラールは何か言いにくそうにしているオリビアに気付いていつつも、ローレンの民として王の所在を気にする思いは分からないでもなかったので、ありのままを語った。


「居なかった。荒らされた後だったから、俺が着いた時には殺された後だったかもしれない」


大きく見開かれた金茶の瞳から大粒の涙がぼろっと零れた。

唇を瞳をぶるぶる震わせて悲しみを押さえることのできないオリビアは、驚いて言葉も出ないジェラールの身体に黙々と包帯を巻きながら、呟いた。


「そう…。教えてくれて…ありがとう」


「……王たちの死体は見ていない。そう悲観するな」


慰めと取れる言葉はオリビアの胸には一切響かず、いっそう決意が固くなる。


ウェルシュに近付いて全てを聞き出さなければ、と。
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