「同じ空の下で…」

久々の実家の匂い…───

もう、長い事帰ってなかった。


母は私の顔を見ると、目を丸くして息を飲んでいた。

「…夕飯、済ませたの?」

「ううん、まだだよ…。」

「一緒に…食べようか。」

「うん…」

荷物をおろし、ダイニングテーブルに座る。

ほんのり鼻をかすめる…シチューの香り。



あぁ…人が作ったご飯って…おいしいなぁ…


私の泣きはらした瞼や腫れた頬を見ても母は何も言わずにいてくれた。きっと色々聞きたい事はあるんだろうけど…。静かに食事をする。それがとてもありがたく感じて仕方なかった。

「デザートもあるのよ。」

「うん。」

「麗香の大好物…あの有名店のロールケーキ♪」

「うん。」

麗香とは、妹の事である。
まだ、高校生だ。この時間は彼との電話時間らしく、リビングには降りてこなかった。

「ごちそう様」

「艶香?」

「ん?」

「ゆっくりしていっていいのよ。いつまで居てもいいからね。」

「…うん。・・・・突然…、ごめんね。」

ストロベリーティーの缶を開けて、ティーポットに茶葉を入れていると、ドタドタと階段を駆け降りてくる麗香がリビングに現れた。

「あれ?つやか?どしたの~?」

冷蔵庫をあけながら、自分の分のロールケーキを取り出し始めた。

「けんか~?目、真っ赤じゃん。」

「飲み物…紅茶でいい?」

「うん。」

フォークを口にくわえ、麗香はドカッと私の席の横に座った。
三人分の紅茶を淹れると、自分のだけに、牛乳を注ぐ。

静かに各々の席に置いて行った。

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