「同じ空の下で…」
「…艶香、また目、開けてたな…」
「…そっちこそ。私が目を開けてたのに気が付くってことは…瞬も開けてた証拠じゃない…」
「…ま、いいや、どっちでも♪」
私はマジマジと自分の左の薬指を見つめた。
「…瞬、ありがとう。」
「…無くすなよ。」
「うん、絶対に無くさない。」
私の頬の涙を瞬は指で優しく拭き取りながら、
「…艶香、愛してる」
と、おでこをくっつけた。
「うん。私も、瞬を…愛してる。」
瞬の瞳の奥の自分の姿を、じっと見ていた。
「…もう、寂しいなんて…言わせないから。強がる艶香もなかなか好きだけど、何より離れたくない、離したくない。」
「…うん。」
潮騒がまたかすかに聞こえる。
蝉の声も聞こえる。
目の前の瞬の瞳は透き通る程の深いブラウンをしていた。
長いまつ毛が時折私の頬に触れ、私はくすぐったくて顔を逸らせた。
「お腹すいたな…。」
「ほんと…。今何時?」
瞬の腕時計を覗き込むと13:42を指していた。
「飯でも食いに行こう。」
「うん。」
薬指には、前に瞬に貰ったリングと、エンゲージリングが輝いている。
その様を見て、私は自然とにやけてしまう。
瞬に渡されたヘルメットを被りバイクの後部席に跨ると、また、瞬にしがみつく。
走り出す瞬間に、また半島を見た。
さっきとは景色が違って見えたのは、やっぱりプロポーズのお蔭なのかもしれない…────。
海原が太陽に照らされてキラキラ光って見えて、まるでダイヤの欠片が拡がっているように見えていた───…