「同じ空の下で…」

・・・・・──────


「英君。」

「はい。」


週末明けの気だるい月曜日。

相変わらず残暑が厳しい9月の上旬。

出勤する前には、瞬とお決まりのように朝からくっつき合って甘いひと時を過ごした。

そして駅まで2人で歩き、駅まで来ると各々の道へとバラバラに歩き出す。


少し早目に出勤した私は、まず労務担当の主任の所と人事課に行き、自らの結婚報告を済ませ、定例の朝礼でもそのご披露があり、課内の拍手を浴びた。

勿論、常務にも報告したはずだっていうのに、常務はさっきから相変わらずの旧姓で私を呼ぶ。

まさか、常務に『もう英ではありませんっ!』なんて反論するわけにも行かず、私は素直に返事を返す。

…と言っても、私自身まだ『岡崎』と呼ばれる事に不慣れなのだけども。(むしろ、岡崎と呼ばれてもすぐに返事が出来ないような気がする)

そして、常務室へと入る。

「失礼します。」

「そこに掛けてくれないか。」

「…はい。」

素直に言われるがままに、私は常務室の応接席に腰を下ろした。


「…先日のプロジェクトの件だが、考えてくれていたかな?」

「…は、はい。」

「返事を聞かせて頂いても構わないだろうか?」

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